nanaの一口エッセイ~力を抜いて、ゆったりと・・・season2 第6回

公開日 2019/06/01

コラムnanaの一口エッセイ~力を抜いて、ゆったりと・・・ season2

第6回 二本の映画

◆予定が真っ白な土曜日に
数か月前になってしまいましたが、ふと予定が真っ白な土曜日があり、気になっていた映画を観に行ってきました。
まだ行ったことがない吉祥寺のアップリンクでもやっていたのですが、時間がうまくい合わず、新宿のシネマカリテに出かけました。
東口からほど近い、地下にある小さな映画館は、ミニシアター系の面白そうな映画をやっているので、時々足を運びます。
映画評を読んで気になっていた作品とは、「ジュリアン」。
そして、この館で偶然上映していた「マチルド翼を広げ」も観たいと思っていた作品だったので、お昼をはさんで鑑賞することにしました。
どちらも、親子の関係、家族の関係を描いた作品で、深く、重く、わたしのこころに残りました。

◆親を守ろうとする子どもたち
「ジュリアン」は、DV家庭の両親の離婚とその後の養育権の問題、暴力的な父親から母親を必死に守ろうとする主人公の少年、息つく間もないストーリー展開に圧倒されてしまいました。
わたしは、最近暴力の問題に取り組む団体の勉強会に数回通っているのですが、バタラーと呼ばれる暴力をふるう人の最も酷い典型を見たような気がしました。
そして、その暴力に苦しむ家族の姿が、とてもリアルに迫ってきました。

一方、「マチルド翼を広げ」は、精神を病む母親と暮らす女の子の成長の話でした。
どんな状況でも、母親をかばい、助ける健気なマチルド、そして母親からプレゼントされたフクロウが、マチルドに寄り添い、話しかけ、ボヤ騒ぎなどの時に助けるというストーリー。
9歳のマチルドは、まるで親子の立場が逆転したかのように、母親の世話をし、母親に寄り添って暮らしいていました。
食事の支度など甲斐甲斐しくこなす姿がかわいいけれど切なくこころが痛みました。
別れた夫や、周りの人々の対応は、良くも悪くも考えさせられるところが大きく、胸の中で何度もため息をつきながら観ていました。
精神を病む親が増えているように思われる昨今、日本でも似たようなケースがあるかもしれません。

◆子どもの愛
二つの映画に共通するのは、子どもの親に対する、特に母親に向けたあふれんばかりの愛情でした。
子どもは、親を選べないということ、おかれた環境の中で、何とかしようと頑張り、成長していくのだということを感じました。

親はいつも子どもの事を一番に考えていると思っているけれど、子どもの方がむしろ親を思う気持ちが強いことを再確認した2つの作品でした。
二本ともフランス映画でしたが、離婚や家庭内の問題は、国を超えて共通しています。
そして、離婚や家庭内の問題で、苦しみ傷着つくのは大人でだけではなく、むしろ子どもの方かもしれません。

このニ本の映画は、母を思う子どもの気持ちや、家族の問題について、様々な視点から考えるきっかけとなりました。


◆母の日
今年の母の日は、どのように過ごされましたか?
わたしは、高齢になった母の側で過ごしました。
肺炎で入院していて、とても心細くなっていたようで、私が行くととても喜んでくれました。
これまでは、わたしに遠慮していたのか、見舞いに行っても、「暗くならないうちに早く帰りなさい。」などと気丈に言っていた母でしたが、今回は、「もっといて欲しい。」とめずらしく甘えてくれました。
その歳にならなければわからないことがたくさんあると思いますが、家族が側にいる安心感はかけがえのないものであることだけは、確かなのだと思いました。
そして、わたし自身も、母の側にいられる幸せを感じた母の日でした。
母が頑張って長生きしていてくれることが、母の子どもであるわたしのこころの支えになっていることを実感しました。
 


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nana

2019年6月号