公開日 2019/07/01
老後資金の必要額について
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの伊達です。
子育てコンビニの暮らしのお金に関するこのコラムでは、皆さんの暮らしに役立つ内容をお伝えしていきます。
金融庁が2019年6月に公表しました、金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」がニュース等で話題になっています。
報告書の現状整理の章には、「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1300万円~2000万円になる」との記載があります。この2000万円の数字だけが注目されてしまったようです。
今回は老後資金の必要額について考え方を紹介します。
■老後資金の必要額は人それぞれ異なる
老後資金の必要額は、実際は人それぞれ異なります。資料や記事では、わかりやすく説明するために統計にある平均の金額を使うことが多くなります。しかし、あくまでも例えに過ぎません。大切なのは「自分の場合はどうか?」という視点で考えることです。
■老後資金の必要額の考え方
老後資金の必要額については次の計算式が参考になります。
([A 老後の毎月の収入] - [B 老後の毎月の支出])×12×[C 老後の年数]
この数字がマイナスならば老後資金が不足することになりますので、老後に入る前にしっかり貯蓄などをする必要があります。さらには、毎月の支出に入らないイベント費用、持ち家の場合は家の修繕費なども考えておく必要があります。
今回の報告書の例を当てはめてみます。
A 老後の毎月の収入:20万9198円
B 老後の毎月の支出:26万3718円
C 老後の年数:30年(65歳~95歳)
計算結果はマイナス1962万7200円となりました。約2000万円ですね。
報告書に記載の金額は、総務省の2017年の家計調査の統計を使っています。
■自分のケースにあてはめてみましょう。
先に紹介した計算式にご自身のケースの金額を入れてみましょう。
まず、老後の毎月の収入は年金をベースに考えましょう。50歳以上の方であれば、毎年送られてくる「ねんきん定期便」に公的年金の受給見込み額が記載されています。50歳未満のかたは「ねんきんネット」で受給見込み額をシミュレーションすることができます。
次に、老後の毎月の支出は、現在の日常生活費をもとに見積もりましょう。子どもがいるご家庭では、子どもが独立したケースを想定しましょう。一般には現役時代の約7割ともいわれますが、これを機に考えましょう。
賃貸住まいの方は家賃も支出に入れる必要があります。賃貸住まいの人は、持ち家の人に比べると老後にかかるお金も増える傾向にあります。
最後に、老後の年数です。リタイアして老後が始まる年齢は人それぞれ異なります。何歳までかについても、90歳と考える人もいれば、100歳を想定する人もいます。しかし、寿命が延びている現状では長めに考えることをおすすめします。
老後資金の必要額は、老後の支出やリタイア時期によって変わります。まずは現状でどうなりそうかの見積もりをしましょう。その上で老後の生活や、老後に向けた備えについて考えてみてはいかがでしょうか。ぜひ参考にしてください。
出典:金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
-------------------------------------------------------------------------------
FPオフィス マネーライフ・ラボ三鷹 代表 伊達寿和
充実した人生を生きるには個人がお金に関する知識を持つことが重要と思いFP資格を取得。その後に事務所を開業。親身なアドバイスと分かりやすい説明を心掛けて、三鷹市を中心に活動中。
CFP(日本FP協会認定)、1級FP技能士、住宅ローンアドバイザー、相続アドバイザー協議会認定会員。日本FP協会2017年「くらしとお金のFP相談室」相談員、2018年「FP広報センター」スタッフ。
ホームページ http://mitaka-fp.jp/
2019年7月号