一般社団法人みたかSCサポートネットを立ち上げたチカラ~第4回 番外編 次女の話をします

公開日 2019/08/10

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 一般社団法人みたかSCサポートネット代表理事の四柳千夏子です。防災教育や補習学習などで、学校教育とコラボしながら子どもたちの支援活動をしています。

また、文部科学省総合教育政策局コミュニティ・スクール推進員(CSマイスター)としても、全国区で活動しています。

三鷹の教育にどっぷりとはまっているこの20年間を8回にわたりおはなしさせていただきます。


<第4回> 番外編 次女の話をします

次女は3月末の早生まれ。おしゃべりが達者なほうではなかったし、左利きなこともあって折り紙やハサミも苦手な子だった。「もしかして普通の子より遅れがあるかな」とうっすらは思っていたが、小学校入学前の就学時健診で初めて指摘を受けた。見知らぬおじさん(今から思えばおそらく市の保健センターか何かの人)に「お母さん、お子さんを育てていて何か困ったり悩んだりしたことはありますか?」と聞かれたのだ。入学後は普通学級に入ったものの、鉛筆の持ち方を習得するのに一学期間かかるありさま。

2年生のとき、担任の先生に知能テストを受けるよう言われて受けてみると、確かに発達に遅れがある部分があることがわかった。そのときの担任の先生の言葉は「娘さんにあった教育を、お金をかけて探すのも親の務めですよ。」。これは、親切のつもりで言ってくれていたとしても、ずうっとうっすらと悩み続けていた私にとっては辛すぎる言葉だった。

救われたのは、就学時健診とこの知能テストで実際に娘を見てくれた小学校の通級学級の先生の、「娘さんは確かに遅れがありますが、娘さんなりに成長が見られます。だからお母さん、娘さんのペースを信じて、これからも注意深く見ていきましょう。」という一言だった。

しかし、高学年になると、くちさがない男の子たちから何かといじられるようになった。(私は当時、決して「いじめられている」という言葉を使わなかった。娘に自分がやられている行為が「いじめ」なのだと思わせたくなかった。)学級も荒れてきて、机や服に「死ね」と書かれたり、持ち物を隠されたり。学校に相談したのだが、案の定犯人探しが始まり、ある男の子がお母さんと一緒に家に謝りに来たこともあった。私が望んだのは犯人を見つけて謝罪してもらうことではなかった。「人と違う」ということをそれぞれの個性として認め合い、尊重し合うクラスづくりをしてほしかっただけなのに…。

そんなとき、たまたま知った近くの私立中高一貫の女子校に娘は憧れるようになり、思い切って受験させることにした。学力も十分ではなかったが、とにかく必死に勉強し、学校説明会にも通いまくり熱意を示し、個別面談もしていただき、何とか入学することができた。あのくちさがない男の子たちとの交友関係を断ち切りたい。その一心だった。成績はずっと低空飛行だったが、仲のいい友達もでき、部活動も楽しんでいた。

高校2年に進級した4月のある日、学校から電話があった。「今日、お嬢さんが学校を欠席したのですが。」朝、普通に「行ってきます。」と出ていったはずなのに。高校になり、ついに勉強についていけなくなったのと、高校から入学してきたやはりくちさがないクラスメイトにいじられていることが原因だった。

そこから不登校の日々が始まった。朝は普通に起きられるのに、学校に行こうと支度を始めると具合が本当に悪くなる。何とか学校に行けても教室に入れないようで図書館通い。トイレに立てこもることもあったらしい。 

何度か先生と面談もしたが、若い男の先生は「欠席日数が増えると進級できません」としか言ってくれず、娘の心を心配するような言葉は一言も無い。私も娘とだいぶバトルを繰り返したが、ある日、とりあえず学校に行かせた、と思っていた娘が実は公園で時間をつぶしていたことを知り、制服姿で公園にいる娘の姿を想像して、ハッと気づいた。無理やり家から出して、目の前からいなくなってホッとしていたのは私だけ。娘は一つもハッピーじゃない!と。1学期の試験も受けられなかったが「試験が受けられないと成績を付けることができず、進級できません。」としか言ってくれない先生に、心はもう決まっていた。

高校2年の夏に学校を辞め、通信制の高校を探して転入した。彼女でもできるアルバイトを探してバイトも始めた。さらに通信制の大学に入ることができ、今は本当に自分の生活を楽しんでいる。家のこともとてもよく手伝ってくれて親が言うのも何だけれど、とてもいい娘に育ってくれた。

親としては、自分の子どもに他の子と比べてできないことがたくさんあって、なかなか「普通にできる」ようにならないとイライラしてしまうし、私自身も娘にだいぶイライラをぶつけたこともあった。そんな手のかかるお子さんを持っているお母さんたちに言いたい。

もしかしたらお子さんは普通の人生は送れないかもしれない。
でも「普通」って何?「普通」じゃなくても大丈夫!「人と違って」いても大丈夫!!うちの娘は今、幸せそうだよ。今でもハサミは苦手だけど。
 

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2019年8月号