ママとパパのリレーエッセイ-第199回-アトリエ・コスモス片倉洋子さん

公開日 2019/09/01

コラムママとパパのリレーエッセイ 第199回 -アトリエ・コスモス片倉洋子さん

こんにちは。アトリエ・コスモスの片倉洋子です。私が富山から三鷹に越して来たのはもう29年も前のことです。時の経つのはなんて早いのでしょう。つくづくそう思います。

当時5歳と1歳の息子をかかえ、仕事と子育ての両立に疲れ切っていた私は、三鷹に来て、どこかほっとして心が救われたことを思い出します。田んぼの広がる富山とは違って、武蔵野の面影を残す三鷹の風景は本当に美しいと思いました。毎日でも子どもたちを連れて行きたくなるような緑あふれる公園、清らかでやさしい野川の流れ。それらの風景に癒され、自分の心の緊張もほぐれていくようで、とても嬉しかったのです。
 
転居によって区切りがついたこともあり、三鷹に来てからはたくさんの女性たちに助けられ、話を聞いてもらい、少しずつ元気になっていきました。そうやっていろんな経験を重ねながら、気が付いたらいつの間にか自分の人生を振り返るほどの年齢になってしまいました。
 
そんな私が、ちょっぴり苦い後悔も含めて思うのは、子育てにとっては、子どもの周りの大人、特に一番身近にいる母親(または養育者)の心の安全・安心がなにより大事だということです。私はもう子育てをやりなおすことはできません。でも平成も終わって新時代を迎えた今、身近なところからでいいから、だれもが安心して子育てのできる「しくみ」や「つながり」を作っていくことが本当に大切だと思っています。
 
私は今、井口で小さなアトリエを開いています。「色彩心理」をベースに、ひとりひとりの個性を大切にした、画材もテーマも自由な絵画造形教室です。

私にとってアトリエで子供たちの作品に触れる時間はとても貴重です。「ああ、私もあんな色を使っていたなあ」とはるか昔の子供時代を追体験したり、子どもたちの言葉やしぐさにおもわず自分自身の子育てを振り返ったりしています。小さいころからネット環境にある今の子どもたちから、私の知らないさまざまな「子どもたちのリアル」を教えてもらったりもします。

子どもを取り巻く社会環境がどんどん変化する中で、それぞれの個性を見つけ、自分らしく生きていくのはとても大変だと思います。でもアトリエで作品制作に没頭している子どもたちを見ていると、なんだか希望が湧いてきます。上手下手の物差しでなく、心のままに表現することを通して、子どもたちは「今を生き」「自分を大事にしている」と思えるからです。自分を大事にすることを知っていれば、自然に人にもやさしくなれるし、自分を肯定する力も育っていきます。息苦しい世の中で少しくらい辛いことがあっても、きっとなんとか乗り越えていってくれるのではないかと思えるのです。

アトリエは今年で14年目になりました。アトリエを、誰もが心からの表現を楽しみながら自分を大事にできる、そんな場所にしていきたいと思っています。それが、ちょっぴり(かなり)先に生きてきた私から、未来の可能性あふれる子どもたちへのせめてもの「贈り物」になれば。そんな気持ちで、これからもみんなと一緒にいろんな表現活動をしていきたいと思います。
 

2019年9月号