公開日 2020/01/10
nanaの一口エッセイ~力を抜いて、ゆったりと・・・ season2
第8回 小さな話ですが・・・
◆2019年という年
この拙エッセイがアップされるのは、年明けだと思いますが、2019年は、わたしにとって大きな節目のひとつであったと思い起こしています。
平成から令和になったことも大きな時代の変化でした。
平成元年にわたしは2番目の子どもを出産、そして最初の孫は、平成30年生まれとひとつの時代は、二つの命の誕生で始まり、終わりました。
そして、昭和、平成と強く生き抜いた母は、令和元年にこの世を去りました。
2019年は様々な出来事があり、ちょっと大げさかもしれませんが、これでもかというほど次々に難問が立ちはだかり、それらを一つずつ、乗り越えながら生きてきたように思います。
◆ある日の出来事
今年もまだまだやらなきゃならないことがいっぱいで、クリスマスどころじゃないな、などと暗い気持ちで過ごしていたある日、事務所のプリンタのインクが切れてすぐに使いたい書類が印刷できない状態になってしまいました。
泣きっ面に蜂?
事務所のプリンタは、E社のものなので、インクが切れたらウンともスンとも言ってくれません。自宅のC社のプリンタは、融通が利くタイプで、何度かOKボタンを押すと薄くなるまで印刷してくれます。
そんなところにも、メーカーのポリシーが出るものだと、歳をとったわたしは、深読みしてしまいます。
もちろん、融通が利く方が私は好きです。
「インクを交換しますか?印刷を中止しますか?」というデジタルメッセージに、「はい、はい」と独り言を言いながら、近くの量販店にインクを買いに行きました。
インクは種類が多いし、間違って買ってしまうと大変なことになるので、空箱をもって出かけました。
広い店内、空箱を見ながら、インク売り場はどこかなあと、キョロキョロしていたら、「インク売り場はこちらですよ!」とやさしい声が聞こえ、振り向くと、その方は、わたしを売り場まで連れて行ってくださいました。
髪が白く、小柄でやさしそうなおじいさんと言っては失礼ですが、だいぶ高齢の店員さんでした。
思わぬ対応に、わたしのイライラした心は、ふっとなごみました。
一昔前の店員さんは、みんなこんな接客だったなあと、懐かしくもありました。
人を介さずにネットで買い物する昨今、安く売るために、人件費を節約しているのか、店員さんの数が少なく、インク売り場など聞かなければ教えてなんかもらえません。
広いフロアで店員さんたちは、無線で連絡を取り合い忙しそうです。特に若い店員さんだと、聞いてもそっけない対応が関の山。
◆ことばの傷
また、こんな話も聞きました。
引っ越してきたばかりの時に、絵本を借りに小さな男の子二人を連れて図書館に行ったときのこと、まだ2歳の男の子が大きな声で話をしたのを、年配男性に咎められたのだそうです。
かなり、きつい言葉が胸に刺さったようで、そのお母さんは、それ以来図書館だけでなく、公共の場に子どもと出かけるときに、アレルギー症状が出るほどのものすごいストレスを感じるようになったそうです。
図書館の方が、追いかけてきてフォローして下さったそうですが、一度受けた傷はなかなか癒されません。
わたしも、バスを待っているとき、自転車に乗っていて、交差点で信号待ちをしているときなど、何度か知らない人から、悪態をつかれたり、舌打ちされたりして、傷ついた経験があります。
自分も悪かったかもしれませんが、お互いさまなのにという思いと、その時に受けた心の傷をわたしは、なかなか忘れることができません。
◆ことばの力
ことばの力は大きいです。
家庭でも、外でも人と話すとき、何げなくことばをかけていますが、思いだすことがありませんか?
あの人のあの言葉が、わたしの支えになっているとか、あの人のあの言葉が、今も時々ズキズキ痛むとか。
他人からも、肉親からも、勇気づけられる言葉あり、傷つけられる言葉あり、良かれと思って言った言葉なのに、人を傷つけることもあります。
恐ろしいことに、何げなく言った言葉が、それを受けとった人にとって、力になっていたこと、また傷になっていたことが、言った本人の知らないところであるかもしれないのです。
子育てもことばがけが大切だと、何度も言われていますね。
家庭内でも、気をつけたいものです。
◆良いはなしは人に伝えたい
歳をとっても、わたしの粗忽な性格は直らず、あちこちにご迷惑をおかけしているなと日々反省しながらも、多くの人に接する活動をしていく中で、ささやかな気遣いができるようになれたらいいなと思います。
ほんの少しの思いやりの気持ちが、人のこころをなごませることができるのだと、思わぬところで体験したわたしは、この小さな出来事を、人に伝えたくなり、久しぶりにエッセイを書こうかと思ったのです。
明るいニュースが少ない今、小さなことでも気づいた良い話は、人に伝えていきたいですね。
nana
2020年1月号