公開日 2020/06/01
nanaの一口エッセイ~力を抜いて、ゆったりと・・・ season2
第10回 自粛生活中パンを焼きながら考えたこと
◆少し出口が見えてきましたが・・・
そろそろ紫陽花が色づいてきました。
感染拡大予防が始まってからは3ヶ月ほど、緊急事態宣言が出されてから2ヶ月近くが経ち、春が来た喜びはどこへやら、梅雨に入りそうです。
ゴールデンウイーク中も”Stay Home”ということで、せっかくの好天の中、お家で過ごすという苦しい生活でしたが、その努力の甲斐あってか、東京は、ロンドン、ニューヨーク、パリ程の死者を出さずに、少しずつ落ち着き始め、昨日緊急事態宣言が解除されました。
感染は収まっても、元の生活に戻ることは難しく、新たな生活様式に慣れるようにという声があちこちから聞こえています。
そしてそろそろ、自粛中何をしていたかという話題も出始めています。
コロナ禍で、小学生以下のお子さんのいるご家庭がどれだけ大変だっただろうかと想像もできませんが、この間仕事もしながら、三度の食事の世話、子どもの生活、学習への気配りなどなど日々頑張っているお母さん、お父さんたちに心より拍手を送りたいです。
◆パン作りを楽しみにして
わたしの自粛生活ですが、すでに高齢者の域に入っている身なので、電車に乗って出かけなくなって早3ヶ月近くが経っていることを除けば、大きな変化はないように思います。出掛けないということは、外食もしていないし、夜間外出もなしなので、規則正しい生活です。
こういう時の楽しみは、食べることくらいなので、何でも手作りするようになりました。
今まで作っていなかったもの、例えばパン、ピザ生地、焼売など、市販のものが美味しいに決まってると思っていた物にチャレンジしてみました。
娘が小学生の頃、長い間学校に行けないいわゆる不登校児になり、今の自粛生活のような日々を送ったことがありました。
一緒にパンを焼いたり、お菓子を作ったりしながら、親子で過ごしていたことを懐かしく思い出しました。
その頃に買って一度も使っていなかった食パンの型があったことを思い出し、ネットでレシピを探し、食パンを作り始めました。
パン作りは、こねる作業にまず時間と力がとられます。
そして、60分程度の発酵が2回とベンチタイムも15分ほどあるので、焼き菓子のようにさっさっとはできません。
これは、ほぼ半日仕事になりますので、60分という待ち時間に何をするかを考えたり、時間の使い方、感じ方が新鮮です。
ゆったりした心もちでないと、パン作りには取組めないと思いました。
◆小さな楽しみでポジティブに
わたしの食パン作り、1回目は、「ん?これで良いのかな?」という出来でしたが、まあまあの味。
2回目、3回目と慣れてくると、発酵具合もわかるようになり、美味しくできるようになってきました。
1斤をスライスして、すぐに食べない分は冷凍しておきます。そういうわけで、この2ヶ月ほどパンを買っていません。
朝は、自家製パンにちょっと上等のバターを塗って、カプチーノといただくのが目下の定番となりました。
外側はカリッとして、中身がモチモチのトーストが病みつきになり、小さな朝の楽しみとなっています。
この自粛生活の中で、毎日何か小さな楽しみを持つことが、ポジティブにものごとをに考えるようになるヒントだと話している先生がおられました。
小さな楽しみは、お風呂とか、読書とか、ジョギングとかなんでもいいと思いますが、パンを焼くという新しい習慣が、私にはプラスになっているようです。
◆どんな世界が待っているのか
コロナ後の事が、取りざたされています。
3.11の時、大きく社会が変わると思っていたのに、経済中心の社会の動きは止まりませんでした。
今回は、ウイルスという見えない敵との共存になるので、違う展開が見えてくるかもしれませんが、経済活動についても一人ひとりが考え直してみる機会になるのではないでしょうか?
このところ、近所のスーパーで、イーストやベーキングパウダーなどはもちろんのこと、小麦粉類の品切れ状態が続いています。
わたしのように、自宅でパンを焼いている人が増えているのでしょう。
とはいえ、またかつての日常が戻り、お店も再開すると、美味しいパンを求めて経済活動をすることになるのでしょか?
昭和の頃は、だれもがお家で作っていたもの、ぞうきんまでもが今は100均などで手軽に買えます。
衣類も驚くほど安く手に入るので、気軽に使い捨てをするのが日常となりました。
経済的に豊かな国の人々にとって、何でもお金を出せば手に入る世の中は便利ですが、世界規模での経済格差がどんどん広がっています。
物があふれ、あふれてくると、断捨離、しかし物を買わないと経済が回らないというこの悪循環。
物欲や便利さ手軽さとの闘いは果てしがないです。
この難問に根本から向き合わないといけない時が来ていると感じます。
◆小さなお子さんを育てているご家庭にエールを送りたい!
数年前に観た「シャーリー&ヒンダ ウォール街を出禁になった二人」という映画を思い出しました。
シアトルに住む92歳と86歳のおばあちゃんが、”経済成長”という言葉に疑問を持って、学生、経済学者、経済アナリストなどに質問をしに車椅子でどんどん出かけていくというドキュメンタリーです。
孫やそのあとに続く世代に何とか持続可能な地球環境を残せないかという想いから、好奇心の強い二人は、自らの年齢や体調も顧みず、ニューヨークのウォール街にまで行ってしまいます。
このお二人、今ご存命だったら、パンデミック渦中の世界について、どんな風に二人で語り合っているでしょう。
こういった映画から、勇気や励ましをもらうのはわたしだけではないと思います。
これからの社会は、落ち着くまでに相当の時間がかかると思われます。
大きな変化が次々と起き、それに伴って揺れ動くことでしょう。
そんな中で、子どもを守り育てているご家庭の苦労は尽きないことと思います。
子どもを守れるのは、親しかいません。
この二人のおばあちゃんのように、わからないことは追及し、自分の考えや価値基準をきちんと持てるようになりたいものです。
この状況下で頑張っているお母さん、お父さん方に心からのエールを送りたいし、微力ですが、できることがあったら少しの事でもやっていきたいと思っています。
nana
2020年6月号