公開日 2020/08/01
ママとパパのリレーエッセイ 第210回 -横田明子(WATA)さん
みなさんこんにちは。
新川で小さな小窓の焼き菓子店WATAを夫婦でやっている横田と申します。
職人気質の主人が黙々と作り、声が大きく余計な話もしてしまう私が、ちょくちょくちょいミスをしながら販売しています。
私たちには5才の娘と、もうすぐ7才になるであろう息子がお空にいます。
私は、息子の出産のとき里帰りをしていました。
経過は順調で予定日当日の検診では「赤ちゃんの動きと羊水が少し少なくなっているようだけど大丈夫!もうすぐだからね」と言うことで帰宅。
その夜中に陣痛が来て朝方入院しました。
もうすぐ赤ちゃんに会えるという期待で一杯の中、分娩室が慌ただしくなり、駆け付けた医師に告げられたのは「心音が確認出来ません」という言葉。
現状が飲み込めないまま病室に移動し、両親と主人に囲まれ、ゆっくりと強くなる陣痛を黙って耐えました。
入院から10時間後、主人の手を握り締めながら産声のない静かな出産を終えました。
この場でこんな話をすることに賛否両論あるとは思い、何を書こうかとずっと迷っていました。でも同じような経験をした人は沢山いて、その殆どが誰にも言えずに一人泣いていたり、時が経ってもどうしようもない悲しみに襲われたり、「家族の一人」として周りに話せない事を苦しんだりしている事を考えて、私の話が少しでも心の拠り所になればと書くことにしました。
そんな私たちにも2年後に娘が誕生しました。
妊娠中は毎日が心配で、検診で動いている姿を確認してはホッとして泣き、予定日まで待つことがとにかく怖くて、一週間前に計画出産をしました。
予測体重よりも600g小さい2294gでしたが、元気に泣きながら出てきた我が子を見た私の第一声は「生きてるー!」でした。
側にいてくれた主人の最初の仕事はへその緒のカット。
ハサミを渡された主人は何の躊躇もなくすぐさまパチン!
助産師さんに「えっ!」と驚かれ、「潔すぎます」と笑われました。
そんな娘ですが、アラジール症候群という10万人に1人の難病を持って生まれ、心臓手術を必要としています。
ですが、今は3つの心疾患がバランスを上手く取ってくれているのか、何の制限もなく、体重が増えない事以外はめちゃくちゃ元気に育っています。
「きっとお兄ちゃんが助けてくれているんだ」と勝手に思い込む母なのでありました。
5才になった娘は、生後11か月から3才まで、お店の看板娘として毎日一緒に出勤していました。
顔を見に寄ってくれるおじいちゃん、おばあちゃん。
娘の成長を一緒に喜んでくれるご近所さんにお客様。
日々沢山の大人達に囲まれて育った娘は、保育園という子どもたちの世界に慣れるまで約2年かかりましたが、やっと楽しく通えるようになり、驚くほど色んな事を学んできます。
これからも共に学び成長し、地域の皆さんと一緒に大好きな三鷹を盛り上げていきたいと思っています。
私は新川にあるお店の小窓にいますので、いつでもお話しだけでもしに来てくださいね。
よろしくお願いします!
2020年8月号