nanaの一口エッセイ~力を抜いて、ゆったりと・・・season2 第14回

公開日 2021/04/01

コラムnanaの一口エッセイ~力を抜いて、ゆったりと・・・ season2

第14回 テレビドラマを見ながら考えたこと

◆さくらが開花し、春が訪れました
新型コロナウイルス第3波から3か月、長かった第2回目の緊急事態宣言がやっと解除されました。
とはいえ、1月の大きな波が少し収まっただけで、安心できる状況には程遠いです。
わたしたちもマスク、手洗い、食事のときの注意など新しい生活様式を守ればある程度は自分や家族を守れるということがわかり始め、昨年の今頃のような敵を知らないゆえの漠然とした不安は薄れてきています。
春の花々は次々と咲き新年度が始まりますが、相変わらずマスク生活は続いています。

◆深夜ドラマにはまる
自粛生活で、テレビドラマを見ている人が増えているようです。
ここ一年ほど、映画館に行くのを自粛している私です。
それもあってか、テレビドラマについては、以前はワンシーズンで見ても1つか2つ見る程度だったのが、今ではチェックしている番組が5つ以上はあります。

昔は、年寄りの見るものと興味も持たなかった、NHKの朝ドラも、いまではすっかり日課となりました。
コロナで外出困難なこの頃は、深夜の番組まで録画して見るようになりました。
漫画の原作を読んでいたので放映が決まった時に、これはぜひ見なければと思ったのが、『その女、ジルバ』でした。

◆高齢ホステスが働くバーのお話
このドラマについて少し説明します。
主人公笛吹新が、シジュウを迎える間際に、マスターもホステスも平均年齢70歳、「Old Jack & Rose」という名のバーに出会い、新米ホステスとして働き始めます。
女性の40歳は、出産適齢期を考えると、ある種人生の節目でもあります。
わたしの40歳を思い起こすと、多忙で家に寝に帰るだけのような夫と2人の子どもを育てる専業主婦で、自分を見失いそうな日々でした。

夢、仕事、結婚、、、40の誕生日を迎え揺れる新は、この店でホステスとして働きながら、これまで知ることのなかった世界を見聞きすることになり、自分を見つめなおし、あたらしい一歩を踏み出します。
少しずつ明らかになっていく、お店で働く高齢ホステスさんたちの知られざる過去のエピソードには、戦中、戦後の日本の厳しい時代を生き抜いた普通の人々の真実がありました。

新の昼の仕事は、デパート勤務から出向させられた、姥捨てと言われる倉庫係、そこで働く仲間との間で起きる出来事は、現代生きづらい社会を映し出してもいました。
主人公と福島の実家の両親や兄弟との関係は、震災の問題も背後にあり、共感する方も多かったと思います。

また、それらのストーリーと平行して、この店の今は亡き初代ママジルバの過去が、ブラジル移民の問題や戦争という今や我々にとって遠くなりつつある日本の歴史につながっていくという仕掛けになっており、奥の深い素晴らしい作品でした。

◆女の人生は一筋縄ではいきません
このドラマは、出演者も多彩でした。
50代以上の方々にお馴染みのベテラン女優さんたちが勢ぞろい。全員が若々しく美しく、歳を重ねてもおしゃれに余念がなく、女であり続けていました。

早朝から、古いNHK連ドラ『澪つくし』を見ていたわたしは、くじらママ役の草笛光子さんの35年前(当時52歳)を同時期に見る事になりました。
歳を重ねても変わらない美貌とあふれる魅力は神々しささえ感じます。
人生100年時代の高齢者はこのくらいでなければいけないのか! 
目標にするには、あまりにも遠い存在です。

ドラマに出てくる女性たちは、悩みながら、傷つきながら、周りの人たちに助け、助けられ、数々の試練を乗り越えて、たくましく生きていきます。
そんな姿は、自分だけが大変なのではない、辛いのではないと、世の女性たちを勇気づけてくれていると思うのです。

もちろん男性がそうではないとは言いませんが、女の人生は一筋縄ではいきません。
女性が子どもを産む性であるという事実は、子どもを持つ持たないにかかわらずその人生選択に大きな影響を与えています。
どんなにしあわせな話でも、不幸な話でも、ドラマのストーリーは、親子にまつわるあれこれに深く関わっているということを、ドラマは教えてくれます。
元気な高齢者のドラマを見て、歳をとるこは悪いことばかりじゃないなと思ったのでした。

◆コロナ後の暮らし方を考えてみませんか?
明治、大正、昭和と100年ほどに目をやると、昔の衣食住は決して豊かではありません。
大正あたりまでは、綿の入った布団は車を買えるほど高価だったそうです。
綿の布団に寝られる人は、限られたお金持ちだけで、シーツも使っていなかったようです。
とりわけ戦争中の食の話は悲惨で、今のわたしたちにはとても耐えられないでしょう。
テレビドラマから見えてくる明治から昭和までを振り返るだけでも、令和の今の暮らしはすいぶん豊かになっています。
今まで当たり前のように見過ごしてきた日常が、いかにすごいことだったのかと改めて感じます。

まだまだwithコロナの生活は続きそうですが、考えてみれば、一部の生活困窮者は別として、わたしたちはエアコンもあり、暖かい布団で寝ることが出来、食べ物に困ることもありません。
あれもこれもと欲望のために忙しかった生活を、少しだけ止めて、今までの自分の世界観を白紙にして、コロナ後の暮らし方をあれこれ考えてみませんか?
これからの世界を生きる子どもたちに、何が一番必要なのか、大切なのか、こんな時だからこそ見えてくることがたくさんありそうです。

テレビドラマを見ながら、つらつらとこんなことを考えてみた春の一日でした。
 

2021年4月号