nanaの一口エッセイ~力を抜いて、ゆったりと・・・season2 第16回

公開日 2021/09/01

コラムnanaの一口エッセイ~力を抜いて、ゆったりと・・・ season2

第16回 時には昔の話を~母から娘へ

◆実際に会うこととリモートは大違い
コロナ禍2回目の夏、思ったより早くワクチン接種ができたので、初めての子育てに奮闘中の娘一家と過ごしました。
娘とは、妊娠してから出産、産後と2年間一度も会えていませんでした。
リモートで会うことはできるし、Lineのやり取りや写真の交換も簡単にできる昨今ですが、実際に会うのとは大違いです。
抱っこした時の感触や重み、くるくると変わる表情、ハイハイやおすわりの様子、指さしや、お口から出すいろいろな音を見聞きできるのは、今この時だけだと、思い切って出かけた次第です。周りの大人は全員ワクチン接種済みでしたが、この時期帰省を自粛された方々には申し訳ないという思いでいっぱいでした。

◆乳幼児期の母親は常時接続状態!
ホームスタートの活動でたくさん子育て家庭にお邪魔して、いろいろお話を聞いてきました。もちろんそれぞれ状況は様々ですが、小さな子どもを育てている母親は、一時も休める時間がないということは共通です。
とりわけ、一歳を過ぎて動きが活発になってきたら、家中が危険だらけ、つかまり立ちで届く範囲もどんどん広がります。何度叱っても同じことを繰り返しやり、引き出しを開けては、中のものを全部出し、棚からは本を引っ張り出し・・・・おもちゃでなんかじっと遊んでいません。絵本にもなかなか集中しなくて、何かを見つけては、接近!動き回るのが大好きで、親はゆっくり食事どころかお茶も飲めません。
離乳食の準備も一仕事です。

そんな日常を見ながら、自分の初めての子育てをいろいろ思い出しました。
過ぎてしまってすっかり忘れていましたが、何もわからず試行錯誤の日々だったことが思い出されました。
赤ちゃんはかわいい、でも一日中付き合っているのは、本当に大変です。
それでも子どもを産んだということで無意識に持ってしまう大きな責任感、母親スイッチみたいなものが入ると女性は24時間常時接続状態になっています。
夜泣きをして起きるのはいつも母親の方というのもそのせいかもしれません。娘もすっかり母親になっていました。
父親は、実際に子育てしながら時間をかけて父親になっていくのに対し、母親は産んだその日から、いいえ妊娠中から母親になっています。
そこから生まれるパパとママの葛藤はいずこも同じです。

◆祖母、母、私、娘、孫・・・
娘は孫と午前中お散歩をするのが日課になっていて、わたしも毎日一緒に1時間ほど歩きました。
ベビーカーが動き出すとすぐに寝てしまうときもあれば、きょろきょろと周りを見回し、小さな子どもや犬などをみつけては、指さしをしたりと、外出は赤ちゃんにとっても楽しい時間です。
散歩しながら、日ごろの様子や、家族のこと、お友だちのこと、最近見た映画や本のこと、そして子育てのことなど、毎日おしゃべりは続きました。

わたしは、自分が初めて子育てをしたときの話をし、あの毎日が戦場のような日々を振り返りました。わたしの場合は、夫が仕事でほとんど家にいなかったため、今でいう完璧なワンオペ育児でした。社会復帰して4ヶ月ほどで、仕事との両立を断念しました。
30年以上前と今とでは、女性の社会進出も進んでいますし、ワンオペという言葉があちこちで批判めいて言われるほど育児の大変さへの理解は高まっていますが、それでもまだまだ母親の負担感の解消までには程遠いと感じます。

わたしも、実家の母とこんな風におしゃべりしながら、自分の子育てのあれこれを話していたのだなあと思います。
もちろん親子なので、いつも穏やかに会話が進むわけではなくケンカになることもありましたが・・・・
母は私の話を聞きながら、自分の昔の話もしてくれました。

また、不思議なことに最近、子どもの頃同居していた祖母との思い出がときどき蘇って来ます。いつの間にかおばあちゃんと呼ばれる立場になり、あの頃の祖母の気持ちがわかるようになりました。わたしと祖母との関係が、これからわたしと孫の間で展開されると思うと楽しみです。
こうして親から子、子から孫へと繋がりができていくのでしょう。

◆人生における永遠のテーマ
振り返ると、私は、これまでワンオペ育児の大変さを次世代で繰り返してほしくないという気持ちで子育て支援活動をしてきたと思いますし、全国に同様の思いで活動している方々をたくさん知っています。ホームスタートのビジターさんたちの多くも同じような動機でボランティアを希望されています。
とはいえ、女性が子どもを産む性であることが変わらない限りは、乳幼児期の子育ての負担が女性に多くかかってしまう事実はどうにもならないのではないかと、どんな状態が理想なのだろうかと考えるようになりました。

40年ほど前の「クレイマー・クレイマー」を始め、子育てをめぐる夫婦の葛藤を描いた映画は数限りなく、きっとこれからも表現に変化はあるにせよ、この問題は人生における永遠のテーマであり続けるのではないでしょうか。
一つ言えることは、結婚や子育てをすることで、人は人間として成長できる機会に恵まれるということだと思います。
さまざまな困難を一つひとつ乗り越えながら、子どもと一緒に大人も成長して行きましょう!

子育てコンビニ/ホームスタート・みたかの活動は、コロナ禍ですが継続中です。

※ホームスタートとは、ボランティアスタッフが週に1回2時間程度訪問をし、話をしたり一緒に出かけたり、保護者が孤立しないように地域との繋がりを作る活動です。
お問合せは、ホームスタート・みたか E-mail:  h-start@kosodate.or.jp
 
nana

2021年9月号