エッセイ

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 13

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 13のイメージ

2022年5月27日

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 13
―大五郎初めてのお遊戯―

水無田気流

 

わが一子大五郎(仮名)、現在4歳5か月。
早いもので、年少さんとして幼稚園に通うのも、あとわずかである。そして、本日は、卒園式前のお楽しみ会。年少組は、「笑ってクマさん」のお遊戯を披露するとのこと。

……思うに私は、子どものころ、お遊戯が苦手だった。いや、集団行動全般が苦手と言うか、「不可能」であった。幼稚園では、お帰りのバスを待って整列をしているだけで具合が悪くなるほどだった。こっそり机の下などに隠れ、先生方に園内を捜索させてしまったこともある。今思い出しても、周囲の大人には申し訳ないことばかりしていた。
「人が揃って同じことをしている」というのが、ひたすら生理的レベルで恐ろしかったのである。
当然お遊戯会は、恐怖で唇を紫色にして踊っている写真ばかりだ。

こんなダメ母の子である。わが子も踊らずに、ホールの隅で壁のしみなどを眺めている子でも、温かい目で見てあげよう……。そう思っていたが、リス役のお面をつけた大五郎、いきなりお友だちを軽く押しのけ、センターを陣取った。

ストーリーは、巨大ぬいぐるみのクマさんが泣いているので、みんなで歌って踊って笑わせようというもの。「笑ってクマさん♪笑ってクマさん♪クマさん笑ってよ~♪」のお歌を歌う大五郎、終始センター位置を保持するばかりか、その「主役」のクマさんに抱きつき、飛び跳ね、大はしゃぎ。
しかも笑顔で「ママ大好き~!」と私に向かって手を振り、やりたい放題である。

大五郎、おまえはリスだ!リスに徹しろ!リスを演じろ!と念じたが通じず、周囲の注目を浴びてますます調子に乗り、「ママ~!」と呼びかけてくる。

その弾けっぷりに、「大五郎ちゃん……自由ですね」と周囲のお母さんたちに言われる始末。
しかも歌い足りなかったのか、帰宅後にかれこれ4時間になるが、まだ歌い続けている。

本当にこの性格、誰に似たのだ、大五郎……?

<続く>

 

コンビニ通信vol.23(2012年10月発行)掲載

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