エッセイ

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 43

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編  43のイメージ

2022年5月27日

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 43
―大五郎、自粛家族生活―

水無田気流

 

わが一子大五郎(仮名)、現在12歳8か月。
ついに、中学生になった。なった、はずだ。うん、たぶん……。と思ってしまうのは、例の新型コロナウィルスの影響で、2月に1度あった登校日以降、一度も中学校に足を踏み入れていないからだ。入学式も今年は中止となった。せっかく校歌をフルコーラスで覚えていたのだが、まあこの緊急事態下である。しかたない。

大五郎が入学した中学は某大学附属であるため、大学と共通のオンライン授業支援システムがある。これを活用して本格的なオンライン授業受講となったが、なかなかに大変である。
毎日オンラインで授業を受講し、ネットで課題を提出せねばならない。当然ながら見落としも多く、親としてはひやひやしている。
だが夫は「親がフォローしてくれるものだと思ってはいかん! 課題スケジュールを自分で管理するのも勉強のうちだ」と言い、まあ私もそうかと思い本人に任せることにした。

一応、毎日やっているようではあったが、ふと見ると親の目を盗んでパソコン画面を器用に切り替え、海の向こうの大きなお友達と戦車で対戦ゲームをしている!? ……慌てて確認したら、締切を過ぎた未提出課題がゴロゴロあった。ああもう。

それにしても、わが家は夫も大学教員のため夫婦揃って自宅でオンライン授業、大五郎もオンライン授業の受講で、家族そろってヘッドセットをつけて自宅にいながら頭の中身はそれぞれ違う学校に出向いている。
なんだろう、このゆるく間の抜けたディストピア小説みたいな光景は……。

そして、私が300人の大学生を相手にリアルタイム授業をしているというのに、大五郎は書斎に乱入して来て「ママ〜!中学の時間割はどこ〜?」などと言いながら、授業用のカメラに映り込んだりする。
後日学生のリアクションペーパーには、「息子さん、かわいかったです」などと書かれてしまった。

文科省の推奨するオンライン授業の理想にはほど遠い、自宅授業環境の貧しさよ……。

<続く>

 

コンビニ通信vol.54(2020年7月発行)掲載

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