エッセイ

教えて!伊達さん ~お金にまつわるお話~ 第82回

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2025年4月23日

教えて!伊達さん ~お金にまつわるお話~ 第82回

◆2025年から「年収103万円の壁」は年収160万円になったけど・・・

こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの伊達です。
子育てコンビニでの暮らしのお金に関するこのコラムでは、皆さんの暮らしに役立つ内容をお伝えしています。

2025年3月末まで国会で議論されていた「年収103万円の壁」について、法案が成立し、所得税が課税される最低年収額が160万円に引き上げられました。ニュース等でも連日取り上げられていましたね。

今回は「103万円の壁」が160万円に引き上げられた変更点について紹介します。


■「103万円の壁」とは?

パートやアルバイトなどで働いている人は給与収入がありますが、一般的に給与収入に対して所得税や住民税が課税されます。

所得税では、収入や所得から一定額を引く「控除」という仕組みがあり、給与をもらって働く人は年収103万円以下であれば所得税がかかりませんでした。これが「103万円の壁」と言われるものです。

関係する控除には「基礎控除」と「給与所得控除」の2つがあります。

1つ目の基礎控除について、合計所得金額2400万円以下の人には一律48万円が適用されました。

2つ目の給与所得控除について、給与収入が162.5万円以下の人には55万円が適用されました。

結果として、次の計算のように給与収入が103万円以下であれば、所得税がかからなかったのです。

基礎控除48万円+給与所得控除55万円=合計103万円

■160万円に引き上げられた仕組み

今回の令和7年度の税制改正で103万円が160万円に引き上げられたのは、基礎控除と給与所得控除の変更によるものです。

今回の改正により、次のように給与収入が160万円以下であれば、所得税がかからなくなります。

基礎控除95万円+給与所得控除65万円=合計160万円

■変わっていない「106万円の壁」と「130万円の壁」

所得税に関する年収の壁である103万円については、今回の税制改正で160万円に引き上げられましたが、社会保険(厚生年金や健康保険)に関する106万円や130万円の壁はそのままです。

つまり、従業員が51人以上の会社で月額賃金が88,000円(年収106万円)以上で働く場合には、配偶者の扶養から外れて本人が厚生年金や健康保険に加入する必要があります。

また、106万円の壁が適用されない場合でも、年間収入が130万円を超えると、配偶者の扶養から外れて国民年金や健康保険に加入する必要があります。

今回の税制改正でむしろ「106万円の壁」や「130万円の壁」のほうが注目されることになりそうです。

■(参考)基礎控除の見直し

基礎控除については、次のようになりました。

合計所得金額 132万円以下:95万円
132万円超~336万円以下:88万円(注)
336万円超~489万円以下:68万円(注)
489万円超~665万円以下:63万円(注)
665万円超~2350万円以下:58万円
2350万円超~2400万円以下:48万円
2400万円超~2450万円以下:32万円
2450万円超~2500万円以下:16万円
2500万円超:0円

(注)132万円超~665万円以下の3つのランクについては、令和7年度、令和8年度の2年間限定の特別措置です。令和9年度からは58万円に減額になる予定です。

■(参考)給与所得控除の見直し

給与所得控除については、次のようになりました。

給与等の収入金額 190万円以下:65万円
190万円超~360万円以下:収入金額×30%+8万円
360万円超~660万円以下:収入金額×20%+44万円
660万円超~850万円以下:収入金額×10%+110万円
850万円超:195万円

■給与収入160万円の人の所得税は0円に

給与収入が160万円の人の所得税は次のとおり0円になります。
(1) 給与収入160万円-給与所得控除65万円=給与所得95万円
(2) 給与所得95万円-基礎控除95万円=課税所得金額0円
(3) 課税所得金額0円×税率=所得税0円

年収の壁については、税金に関するものと社会保険に関するものがあります。今回の税制改正で変わったのは税金に関する壁です。混乱しないようにしてください。
ぜひ参考にしてください。それではまた。

出所:
財務省 令和7年度税制改正の大綱
衆議院 所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案
自民党 基礎控除の特例の創設について

 

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FPオフィス マネーライフ・ラボ三鷹 代表 伊達寿和

会社員時代にファイナンシャルプランナー(FP)の職業に出会う。
充実した人生を生きるには各人がお金に関する知識を持つことが重要と思い資格を取得し、その後事務所を開業。
三鷹市を中心に活動し、親身なアドバイスと分かりやすい説明を心掛けている。
CFP(日本FP協会認定)、1級FP技能士、住宅ローンアドバイザー。日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」2017年相談員

ホームページ https://mitaka-fp.jp/

 

 

※コラムの内容は執筆当時の情報によります。

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