エッセイ

新・無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 3

新・無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編  3のイメージ

2026年8月14日

新・無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 3

―水無田、心の師匠に合掌―

水無田気流

 

作家の佐藤愛子先生が亡くなってしまった。享年102歳というから大往生ではあるが、やはり寂しい。密かに、大隈重信の「人生125歳説」を実証してくれるのではないかと期待していたからだ。何しろ、本当に本当の断筆宣言(何度かしている)をしたのが98歳で、そのとき上梓した本だって十二分に面白く読み応えがある。読み応えは文章の歯応えのようなものだが、最後まで衰え知らずだった。

ファンになったのは小学生の時。私は図書室で毎日2冊(上限が2冊だった)借りては返しているような活字中毒だったが、あるとき佐藤愛子の児童文学系の本を読んで気に入り、その後移動図書館「みどり号」が2週間に一度近所に回ってくるたびに著作を借りた。大好きだったのは娘さんとの日常を描いた『娘と私』シリーズで、70年代の「イマドキ」の高校生の娘さんと佐藤愛子の漫才のような掛け合いが面白く、こんな母娘って素敵だなあと思った。『九十歳。何がめでたい』がベストセラーとなったとき、担当編集者からこの本が読まれる理由についてコラムを依頼されて書いたところ、ご当人がお読みになり「いい文章を書く方ねえ、ものの道理がよく分かってらっしゃる」とおっしゃっていたと聞いたのは、一生物の勲章と思った。

その『九十歳〜』では、子供の声がうるさいという批判の高まりに苦言を呈し、こう語っていた。「子供が叫んだり泣いたり歌ったり、力いっぱい騒ぐ声も私は好きだ。そのあたりかまわぬ甲高い声には、未来に向って駆け上がって行く勢いがある」「戦争体験者である私は、空襲警報が鳴り響き、町は死んだように静まり返った怖ろしい静寂を知っている」「町の音はいろいろ入り混じっている方がいい。うるさいくらいの方がいい。それは我々の生活に活気がある証拠だからだ。それに文句をいう人が増えてきているというのは、この国が衰弱に向かう前兆のような気がする」ああ本当に。
どうぞ、ご冥福を。

<続く>

 

 

コンビニ通信vol.78(2026年7月発行)掲載

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