エッセイ
無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 2
2022年2月22日
無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 2
―クラッシャー大五郎 対 クリーナー夫殿、宿命の対決は如何に―
水無田気流
今回、パパ特集ということで、わが家の夫殿について書いてみようと思う。
彼は大変なキレイ好き、整理整頓好きである。大学教員という職業柄、資料類の整理整頓には大変にうるさい。「部屋を整理できない人間は、頭の中身も整理できない」が持論である。
だが、そんな夫のキレイ好きを、根底から覆す存在。それが、わが家の大五郎である。大五郎は、現在1歳8か月。あらゆるものの破壊、配置換え、撒き散らしを得意とする。このため、最近、部屋が日増しにジャングル化して行っている。
それにしても幼児がいる家庭は、よくゴミが出る。夫婦二人だけだったときとは、格段の違いである。そこに追い討ちをかけるようにして、マイ・スイート・タウン三鷹は、今秋ゴミを有料化するという……。うう、どうしよう。私はそれなりにエコロジー意識もあれば住民の義務も理解しているつもりである。だが、マイ・スイート・タウン三鷹は、現段階でも有料化している他の市より、すでにゴミ減量化に成功しているというではないか。本当に必要なのだろうか?それなのに、きちんとした説明もなく、市民に直接投票させるわけでもなく、いきなり上からのお達しは、ちょっとおかしいように思う……。
それはともかく、夫殿は、最近では安住の地であった書斎までクラッシャー・ベイビー大五郎に侵略され、へとへとなようである。大五郎には、ここが遊園地に見えるらしい。プリンタのスイッチを入れ、資料の紙の束を、ぶん投げ、本をぺらぺらめくって大はしゃぎ。ついでに、論文を書く夫の背中に、サッカーボールをがんがんぶつけてくる。
しかし、蛙の子は蛙とは、よく言ったものである。なんと最近、大五郎はゴミの分別を覚えた。
わが家の台所には、分別ゴミ箱がある。上から「缶類」「ペットボトル」「プラスチックゴミ」用になっている。
ある日、ペットボトルをつぶして捨てようとしたところ、大五郎がいそいそとそれを持ち、おもむろに真ん中のペットボトル用のゴミ箱を引き開け、「ポン」した。偶然かなあ、と思ったのだが、次のペットボトルもちゃんと「ポン」、次も「ポン……。」しかも一回一回、きちんと開け閉めしている。
じゃあと思い、今度はペットボトルの蓋を与えてみた。すると、今度は一番下のプラスチックゴミ用の箱を引き開け、「ポン」。次の蓋も。また次の蓋も……。
子どもはすごい。というか、恐ろしい。親のやることを、正確に真似るのである。
いや私も、ゲームをやっている場合ではない。真似られたら困る……と思っていたのだが、時すでに遅し。大五郎は、私の手からゲーム機のコントロールパッドを奪い、キャッキャッと大はしゃぎしながら『バイオハザード』のキャラを動かすようになってしまった。もちろん、要領が理解できていないので、キャラは壁にがんがんぶつかりつづけたり、発砲しつづけたりするのだが……。
大五郎、おまえは数年後には立派なオタクか?そうなのか、大五郎!?
〈続く〉
コンビニ通信vol.12(2010年1月発行)掲載
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