エッセイ

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 15

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 15のイメージ

2022年5月27日

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 15
―大五郎の夏休み―

水無田気流

わが一子大五郎(仮名)、現在4歳11か月。
ようやく夏休みが明けた。長かった……。
毎日幼稚園に行っているときは、適度に子ども同士で遊んで満足して帰ってくるが、夏休みはそうはいかない。仕事をする母の背中によじ登り、肩に乗り、「遊んで!遊んで!遊んで……!」の日々である。おかげで肩こりは悪化。おのれ夏休み……。

家にいるとかえってうるさいため、仕事の合間に大五郎を連れて、せっせと公園、プール、プラネタリウム、さらには水族館などに行った。
とくに気に入ったのはプラネタリウムである。大五郎は今、「宇宙」に夢中。……駄洒落のようで恐縮だが、毎日子ども用の図鑑を開いて、「あんこくせいうん」や「ぶらっくほーる」について熱心に読んでいる。説明も大好き。先日は本屋の図鑑コーナーで、同じくらいの年ごろの女の子をつかまえて、「星の誕生から崩壊と再生まで」を一生懸命説明していた。相手はどう見ても無関心だが、大五郎はめげない。
……やめろ大五郎。自分の趣味ばかりえんえんと話す男はモテないぞ。真剣に将来が心配になってきた。

さらに先日は、「ブラック企業」という言葉を聞き、何かそういうブラックホールに近い壮大な宇宙現象と思いこんでしまったらしい。「ぶらっくきぎょうのうた」を作り、「ぶらっくきぎょう~!ぶらっくぶらっく~ぶらっくきぎょう~♪なんでもすいこむじょ~♪」とご機嫌で歌っている。
「ぼく、いつかはブラック企業を見たい!」と目を輝かせて語っている。親としては、それはできるだけ避けてもらいたいことの一つなのだが……。

このように言葉は達者になったものの、まだまだ摩訶不思議な大五郎は健在である。
夏休み中、保護者の書く日記を見て、自分も日記を書きたいという。
そこでノートをあげて書かせてみたら、「きょうのこどもはせみ」と書いていた。
これはいったい……。

<続く>

コンビニ通信vol.25(2013年4月発行)掲載

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