エッセイ

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 19

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 19のイメージ

2022年5月27日

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 19
―大五郎、星に願いを―

水無田気流

 

わが一子大五郎(仮名)、現在6歳2か月。
宇宙が大好きである。恐竜や古生代の生物ブームも相変わらず続いているのだが、最近はもっぱら天体系ブームが訪れている。

そんな大五郎の、最近の最大関心事は例のアイアン彗星だった。「今世紀最大の彗星」「太陽系の内側に入るのはこれが最後」云々、魅力的な説明につられて、心はすでに星の王子様状態の大五郎。
11月末は、毎朝目覚まし時計を、彗星が見えるという明け方の5時にセット。
だが……起きるのは親のほうばかりなり。
大五郎は、ものすごく眠りが深い。そして、寝起きが悪い。ついでに寝相も悪く、起こそうとすると、すさまじいキック技などの迎撃装置も配備済みである。

しかたなく、彗星が見えたら起こしてやろうと、連日朝5時に寒空の下望遠鏡を片手にベランダに出て見たが……見えない。地平線すれすれのところに、ぼんやりとした光の塊があるような、ないような感じなのだが、それよりもその方角に林立するコンビニやファストフード店の煌々とした明かりがまぶしいのが敗因のようである。
夫曰く、「太陽を通過したら、箒の尾がはっきり見えるようになるはずだから、12月まで待てばよい」とのことなので、信じて待っていた。そして、運命の11月末日が来た。
……アイソン彗星、消滅の発表である。知らせを聞き、泣きだす大五郎。普段泣くときは泣き叫ぶ感じなのに、今回ばかりは声も出ず、ひたすら大粒の涙をぼろぼろこぼし、さすがに見ていて気の毒になってしまった。
世間も大変である。NHKはアイソン彗星番組を急遽さしかえたとか、JALやANAは彗星観測ツアー中止を検討とか、その他もろもろの彗星商戦もまた消滅してしまったようだ。

泣くな、大五郎。おそらく世界中には皮算用がご破算となり、経済的打撃で泣きたいおじさんやおばさんは、きっと大勢いる。
今回に関しては、おまえは1人ではない。なぐさめになっていなくてすまぬ……!

<続く>

 

コンビニ通信vol.29(2014年4月発行)掲載

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