エッセイ
無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 26
2022年5月27日
無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 26
―大五郎、孤独(?)な新学期―
水無田気流
わが一子大五郎(仮名)、現在7歳11か月。
新学期が始まり、私の毎朝の戦闘も再開した。何しろ大五郎は、起こしても起こしても隙を見ては布団に滑り込むのである。
起きるのを嫌がる最大の理由は、「学校に話が合う友達がいなくてつまらない」からだそう。
本日は、プチトマトの鉢を返すため、私も一緒に学校へ。
道中、ずっとヤツはブツブツ言い続けていた。
「あーあ、学校に友達がいないから、僕は孤独だなあ」
「よく一緒に遊んでる子とか、いるじゃない?」
「違うんだよ! 僕の考える友達っていうのは、もっと古生代の生物の話とか、マインクラフトの古代モットの改造コードの話とかができるような子なんだよ!」
……どうやら大五郎の「友達」要求レベルは、マニアックすぎるようである。
「僕は古生代が大好きだから、最初〝バブルき〟って聞いたとき、そういうベルム紀みたいな地質時代があったのかと思ったくらいなんだよ。あーあ、僕は孤独だなあ…」。
一方、通学路上では、あっちこっちから「大五郎君、おはよう!」と声をかけられる。そのたびにヤツは「おはよう〜!」と笑顔で返しては、「本当に僕は孤独なんだよ……。」とぼやく。
意味が分からない。
ようやく学校に到着し、同じクラスの子達が「大五郎〜!」と寄ってきた。やれやれ、それじゃ鉢を返してきて……と思ったら、大五郎は下駄箱で謎の反転を見せ、ダッシュで学校から脱走を試みた……! 周囲にいたお友達が数名わらわらと駆け寄り、「何やってるんだよ!」「朝会に遅れるぞ!」と取り押さえてくれた。
ああ、ありがとう、君たち……。
だが大五郎は涙ぐみながら、「嫌だよ〜! 帰ってパパとゲームの続きがしたいんだよー!」と大騒ぎである。
どうしてこんなゲーム好きでマニアなオタクに育ってしまったのか。誰に似たのだ? 私だ。
たしかに私は廃人レベルのゲーマーだが、私に似るのは人類として非常にまずい。
親の因果が子に報い……の一文をかみしめながら、学校を後にした。
<続く>
コンビニ通信vol.36(2016年1月発行)掲載
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