エッセイ

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 27

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編  27のイメージ

2022年5月27日

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 27
―大五郎、風邪ひきたい踊り―

水無田気流

 

わが一子大五郎(仮名)、現在8歳1か月。
私事で誠に恐縮だが、ここ1週間ほど、私は風邪と格闘している。本来なら寝込まねばならない程度に身体がだるく、咳が止まらず、そしておそらくは38度越えの熱も出ているのだが、いずれにしても原稿の締め切りも講演も授業もあるので、あえて熱を測らず風邪薬を飲み、できるだけ「風邪を引いた自分」のことを考えないようにしながら仕事をしている状態である。
当然、仕事の効率は落ちるうえ、全身が痛くつらい。
だが、大五郎は私が咳き込むたびに近寄ってきては、「風邪菌うつして〜!」と大騒ぎである。

そう。大五郎は、風邪が大好き。正確にいえば、「風邪をひけば学校を休めるうえ、優しくしてもらえる」のが大好きなのである。毎週日曜日の午後には、「風邪をひいて明日学校を休みたい!」と言っている。

だが、ヤツが学校を休むと私は仕事にならない。そこで、風邪をうつさないように部屋の中でも寝るときもずっとマスクをしているのだが、ヤツは隙あらば私のマスクを奪い取ろうとする。やめなさい!と叱り、しばらく大人しくしていると思ったら、あろうことか大五郎は全裸になり、居間で「風邪ひきたーい♪ 風邪ひきたーい♪ やっほっほ〜♪」と、歌いながら踊っていた。
慌てて散らばっていた服を拾って着せたが、私のほうは疲労困憊。背中が異様なほどぞくぞく寒くなってきた。やはり風邪が悪化したのか……? と思ってふと見たら、エアコンが暖房ではなく「冷房」になっていた。
「いつから冷房にしたの?」と大五郎に聞くと、
「1時間くらい前から。だって、どうしても風邪をひきたいんだもん!」

……大目玉を食らわせたが、自分の声が遠くで聞こえるほどの頭痛を覚え、ついにぶっ倒れてしまった。

神よ、この大五郎の熱意を、何か他の勉強とかスポーツとか、とにかく建設的な方向へと向かわせることはできないでしょうか……? お願いします。このままでは私の風邪が……癒えません。

<続く>

 

コンビニ通信vol.37(2016年4月発行)掲載

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