エッセイ

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 29

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編  29のイメージ

2022年5月27日

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 29
―大五郎、これも遠足の思い出…。―

水無田気流

 

わが一子大五郎(仮名)、現在8歳9か月。
先日は、大好きな遠足に行ってきた。遠足のおやつを買う段階から大騒ぎをしていた大五郎だが、早めに用意したのがまずかった。毎日毎日、お菓子を閉まってある棚をながめ、「遠足には食べきれる量を持って来なさいって言われたけど……ちょっと多いから、少しだけ食べていい?」を繰り返しているうちに、遠足前日にはお菓子は底をついてしまった。しかたなく、前日にお菓子を買い直すはめに。

遠足当日、私はいつもより早く起きてお弁当を作り、遠足自宅をさせ、大五郎を送り出した後、TBSの番組出演で朝から夕方まで収録であった。ヘロヘロになって帰って来たら、「今日は雨で遠足はなかったよ」と大五郎。見ると、メールでそのような連絡が……(スタジオに入っていたので、気がつかなかった)。
翌々週、同じくお菓子を買い、早起きし、お弁当を作り、仕事に行って……を繰り返し、今度こそヤツが無事遠足に行ったことを確認し、帰宅後「遠足、どうだった?」とたずねると、神妙な顔をして大五郎は「楽しかったけど、とても悲惨なものを見た」と言う。

いったい何があったのかと聞くと、「カラスにおやつをとられた子がいてね、人間ものすごく驚くとしばらく声が出ないんだって分かった」そうである。
分けてあげればいいじゃないのと言うと、「お菓子の交換は禁止だから」とのこと。そうか、今はアレルギーの問題もあってお菓子は交換しないのだった。私が子どもだったころは、お菓子交換は遠足のメインイベントだったのになあ……。
しみじみそんなことを考えていると、大五郎は妙に目をぎらぎらさせて、「僕は、子どもが遊ぶ場所から、カラスを撲滅する必要を感じたんだよ、今からカラスの生態を研究するからね!」。

……という訳で、鳥類図鑑付属DVDで「カラスの生態」を見るのにしばらくつきあわされ、大五郎が考案したカラス除けグッズの図面をチェックし、と。何だかよく分からない1日のおしまいとなった……。

<続く>

 

コンビニ通信vol.39(2017年1月発行)掲載

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