エッセイ

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 30

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編  30のイメージ

2022年5月27日

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 30
―大五郎、八艘飛び封じの呪い―

水無田気流

 

わが一子大五郎(仮名)、現在8歳11か月。
大好きな夏休みが終わってしまい、新学期は不機嫌で大荒れである。
大五郎は伝家の宝刀、「自由研究の参考にする!」を抜きまくり、博物館に科学館、水族館に連れて行かされ、最終的に「自動車の歴史」に決まり、豊田市のトヨタ博物館まで行って仕上げた……ときには、夏休みも後半になっていた。「もう終わっちゃったの? 夏休みは毎年3か月くらいあればいいのに……。」とごね、私は毎朝ヤツを起こすのに一苦労である。

朝は布団から引きずり出すと目にも留まらぬ早業で夫の布団に入り込み、そこから引きずり出すと今度はすさまじいスピードでソファに寝転がり、そこから起こそうとすると畳んで片づけた子ども布団を猛スピードで敷き直して寝ている……といった有様。
何だこれは、源義経が壇ノ浦の合戦で見せたという「八艘飛び」だろうか。

「将来の夢」を聞かれて、「どんな仕事に就いても、休みの日には思いっきりごろごろするのが夢だよ!」と無駄に目をキラキラさせながら語っていたわが子だが、全力でごろごろしようとする彼を見ていると、将来が大変に心配である。

そういえば、先日ラジオ番組でご一緒した詩人の河野聡子さんは、パフォーマンス「ポジティブな呪いの言葉」の解説の中で、こんなことをおっしゃった。
「たとえば子どもに『そんなことしてると、学校に遅れるよ』なんて言うのもね、一種の呪いなんですよ」と。「言葉には物事を動かす力がありますから。だったらネガティブなものではなくポジティブな呪いをかけるとどうなるのかな、と思って」。

なるほどと思い、「学校って聞くだけで嫌だよ!」とぐずる大五郎に、私は宣言した。
「分かった。今日から我が家では『学校』を『楽園』と呼ぶことにします。さあ、楽園に行きなさい」
「……なんか、楽園が嫌なところに思えてきた!」
「楽園で友達と遊んで来なさい!」
「チクショー! 行ってきます!」

……ポジティブな呪いは、効いたのだろうか。

<続く>

 

コンビニ通信vol.40(2017年1月発行)掲載

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