エッセイ
教えて!伊達さん ~お金にまつわるお話~ 第46回
2022年3月30日
教えて!伊達さん ~お金にまつわるお話~ 第46回 <2020年11月号>
◆令和2年(2020年)の所得税から変更される点とは
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの伊達です。
子育てコンビニの暮らしのお金に関するこのコラムでは、皆さんの暮らしに役立つ内容をお伝えしていきます。
会社員や公務員の方は、年末になると職場で年末調整の手続きをします。年末調整の書類を見て、昨年と大きく変わった点があると気付くことがあるかもしれません。令和2年(2020年)の所得税について、会社員や公務員のサラリーマンにとって大きな変更があります。
今回は、サラリーマンに影響がある所得税の変更点について主なものを紹介します。
■サラリーマンの所得税の考え方
サラリーマンの所得税はどのように計算されるのでしょうか。シンプルなケースで紹介します。
まず、給与収入(いわゆる年収)から「給与所得控除額」を引きます。その結果は「給与所得」と言われ、これは所得税を計算する上で必要な金額です。
(給与収入)-(給与所得控除額)=(給与所得)
次に、各種の所得控除を合計します。所得控除は家族や支出の個別事情を考慮したものです。一律に適用される「基礎控除」、ほかに「配偶者控除」、「生命保険料控除」など多くの種類があります。
(基礎控除)+(・・・)=(所得控除)
そして、給料収入だけの場合は、給与所得から所得控除を引いて課税総所得金額を計算します。最後に税率(所得により異なる)を当てはめると所得税が計算される仕組みです。
((給与所得)-(所得控除))×(税率)=(税額)
住宅ローン控除など税額控除がある場合は、この税額からさらに引くことができるのですが、ここでは割愛します。
■給与所得控除は上限が低くなる
まず、給与所得控除額が一律10万円少なくなります。ただし、次に紹介する「基礎控除」が一律10万円多くなりますので、差し引きでは大きな影響はありません。
次に、給与所得控除額の上限が低くなります。給与収入が850万円超1000万円以下の人は、収入×10%+120万円だったところが、195万円の固定額になります。同様に1000万円超の人は、220万円が195万円になります。
初めに示した計算で分かるように、給与所得控除が減るということは、給与所得が増えて税金が増えることになります。年収850万円以上の人については基本的に増税です。
■基礎控除は増える
一方、基礎控除は一律10万円増え48万円になります。
ただし、合計所得金額が2400万円を超える高所得の人は基礎控除額が段階的に減り、2500万円を超える人は0になります。基礎控除は誰もが受けられるものではなくなりました。
■新しくできた所得金額調整控除
給与収入が850万円を超える人のうち、次の人には所得金額調整控除が適用されます。
本人が特別障害者の場合、23歳未満の扶養親族がある場合、特別障害者の同一生計配偶者または扶養親族がある場合です。
そして、次の金額が控除されます。
(給与収入(1000万円超の場合は1000万円)-850万円)×10%
また、夫婦ともに850万円超で、23歳未満の扶養親族がいる場合は、夫婦両方が適用を受けることができます。
■高所得者には増税だが、負担が変わらない人も多い
制度の変更点は多くありますが、結局負担が変わらないケースも多いのです。次の4つの例について考えてみます。
給与収入のみで850万円以下の人:給与所得控除が10万円減るが、基礎控除が10万円増えるので、変化なし。
給与収入のみで850万円超、かつ23歳未満の子どもなど扶養親族がいる人:給与所得控除が減るが、基礎控除と所得金額調整控除で調整されるので、変化なし。
給与収入のみで850万円超、かつ子どもが23歳以上や子どもがいない人:給与所得控除が減るため、負担増。
自営業など給与収入がない人:基礎控除が増えるので、負担減。
また、ひとり親控除の新設や寡婦控除の見直しもあります。年金収入があるケースについても、公的年金等控除、所得金額調整控除について変更点があります。該当する場合は別途ご確認ください。
詳細については国税庁のホームページ、最寄りの税務署にご確認ください。
ぜひ参考にしてください。
参考:国税庁 令和2年度 所得税の改正のあらまし
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/r2kaisei.pdf
※コラムの内容は執筆当時の情報によります。
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