エッセイ

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 38

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 38のイメージ

2022年5月27日

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 38
―大五郎、バレンタインデーに悟るー―

水無田気流

 

わが一子大五郎(仮名)、現在11歳5か月。
例年2月のバレンタインデーには、女子からチョコがもらえないと嘆いている。一昨年は、自分と仲良しのオタク男子友達に、何と自宅まで女子がやって来てわざわざチョコを渡してくれた(大五郎の通う小学校は、学校にお菓子の持ち込み禁止である)……という話を聞き、「チクショー!俺のほうが、あいつよりも元素記号にも鉱物にも詳しいのに!」と悔しがっていた。
いや、女子が彼にチョコをあげたポイントは、きっとそこじゃないと思うぞ……というツッコミを入れたくなったが、昨年ももらえず。
「女子と話が合わないからいけないのかな?」と嘆く大五郎だが……。

好きな電車や恐竜、古代生物、鉱石、そして最近では専ら好きな徳川将軍は誰?等 を聞いても、興味のない人とは会話が続かないのは明らかだ。
「もう、一生ママからしか、バレンタインデーのチョコはもらえないと思う」と遠い目をする大五郎に、
夫が「何を言うんだ!パパもあげるぞ!」と言うと、
「本当!うわあーい!」と、変なテンションになっていたわが家だった。

そしてやはり今年も……、チョコをもらえなかった大五郎。三鷹駅で好物のチョコケーキを買っておやつに出したら、「チクショー!でもこのケーキうめえ!」と言ってむしゃむしゃ食べた後、昨年よりさらに遠い目をして言うのである。
「もう、女子からもらおうというような、狭い考えは捨てることにした」
ああ、友チョコとか?今、流行ってるよね。
「もうそんな、狭い範囲の話じゃないんだよ。僕のことを友達だと思ってくれたら、性別は元より、種も超えていい気がする」
……どういう意味?
「たとえば蟻が油虫を友情の印としてくれたら、僕は受け取ろうと思う」
……それ、食べるの?
「友情の印なら、食べるよ!」

おまえ、どこまで行く気だ……(汗)?

<続く>

 

コンビニ通信vol.49(2019年4月発行)掲載

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