エッセイ

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 12

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 12のイメージ

2022年5月27日

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 12
―大五郎初めての運動会―

水無田気流

わが一子大五郎(仮名)、現在4歳になったばかり。
幼稚園の年少さんとして、この秋は初めてのイベントてんこ盛り。最大のイベントはなんといっても運動会である。
だが、「闘争心」というものにとんとご縁がない大五郎。徒競走で「よーいドン!」と言われても、周囲を見回してにこにこ後を追い、当然ビリである……。

次に玉入れ競争では、紅組に割り振られた。赤い帽子をかぶって悦に入り、下に落ちている赤い玉を握りしめてにこにこ。よほどその玉の感触が気に入ったのか、にぎにぎにぎにぎして一向に投げる気配がない。そうこうするうちに、他の紅組のみんなががんばってくれて、紅組の勝ち。喜ぶお友だちを見て手をたたき、満面の笑顔の大五郎。
だが…、おまえはまったくその勝利に貢献していない。

そんなこんなで、まるきり目覚ましい活躍を見ずに終了した運動会であったが、後日幼稚園で撮影してもらった写真を見て驚いた。お友だちの集団の中ではつねにセンターに陣取り、得意の「いいお顔ポーズ(両手で頬を持って笑顔)」を取っているのだ。

大五郎は、写真を撮ってもらうのが大好きである。競技ではまったく活躍していないのに、かけらほども気にしている様子はない。
さらに極めつけは、おやつを配られているときの顔である。何というか…ほかのピースフルな写真とは打って変わって、ギラギラとしているのだ。
競技の際には皆目みられなかったすざまじい気迫で、より大きいお菓子をもらおうと狙う野獣の顔がそこにあった。なぜその情熱を競技の場で見せないのだ、大五郎!?

思うに、スポーツの「勝利」というのは抽象的なものである。勝ったからと言って、何が楽しいのか大五郎にはよく分からなかったのだろう。
そう、抽象的な勝利よりも具体的なお菓子なのだ。
大五郎、おまえにスポーツマンシップはまだ早かったか……。

<続く>

 

コンビニ通信vol.22(2012年7月発行)掲載

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