エッセイ
無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 36
2022年5月27日
無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 36
―大五郎、成長の跡?―
水無田気流
わが一子大五郎(仮名)、現在10歳8か月。
この4月で小学校5年生になった。成長は……しているんだろうか。相変わらずの超絶マイペース小僧であり、図鑑大好きなオタクっ子である。親から見てこの性格は、幼稚園児のころに出来上がり、その後いっさい成長がないように見える。
担任の先生の談話をトレースして見ると、「相変わらず授業中は立ち歩くんですが、最近大五郎君は、呼べば帰ってくるようになったんですよ」(三年生の担任の先生談)。
「係の仕事など、役割が振られていることは、自分のやることだと思ってくれるようになりました」(四年生の担任の先生談)。
……うん、その程度のことを進歩と思わねばならないのかと悲しくなるが、「集団生活が苦手」というよりも、「集団生活が基本的に視界に入らない」子であったことに鑑みれば、カタツムリ並の速度ながら、社会適応してきているのかもしれない。
ただたぶん、相変わらず学校の先生は扱いに困る子どもなんだろうな……と思うことは多い。
先日は、東海道新幹線での無差別殺傷事件について、犯人が「むしゃくしゃしてやった」との報道を聞いて、大五郎は言った。
「無職の人がむしゃくしゃするというのは、根底には資本主義の問題があると思うから、資本主義に変わる平等な原理を考えてみようと思ったんだけどね」
うん。
「問題は、<平等とは何か>を決定する者が権力者となってしまう点にあると思うんだけど…。たとえば学校では、平等なのはいいことだと言う前提で話が進んだりするけど、平等とはそもそも何かとか、平等とは何かということを決定するのは誰なのかとか、そういうことはなぜ問題にならないの?」
前提や決定主体を問うということは、たぶん小学校の段階では難しいと思われているからじゃないかな。大ちゃんが自分で考えるのは、いいことだと思うけどね。
「何だよそれ、つまんないなあ」
つくづく、面白くも難しい子である……。
<続く>
コンビニ通信vol.46(2018年7月発行)掲載
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