エッセイ
無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 48
2022年5月27日
無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 48
―大五郎、我が道を行き続ける…のか―
水無田気流
わが一子大五郎(仮名)、現在14歳2か月。
最近私は、中二病というものの存在を、目の当たりにするようになった。何しろただでさえ大五郎なのに、中学二年なのである。
先日は、「自転車でどこまで行けるか試してみたい」と言いだし、何となく横浜スタジアムを目指し、自宅から往復80㎞近い道のりを走破して来た。往路はときどき写真付きのメッセージをよこしつつ、中学のLINEにもアップ。だんだん同級生の応援LINEが増えて来るのを悦に入って眺めながら、ついに横浜スタジアムに到着した、そうである。
ちょうど横浜VS広島戦をやっており、その場にいた野球ファンの人たちに「自転車で40㎞漕いで来た!」と言って驚かれたという。
だが、その後が大変だった。スマホの充電が切れ、地図アプリが使用できなくなってしまった。そこで、交番の警察官や通行人のみなさんに道を聞きつつ、往復合計8時間かけて帰宅。
「地図アプリだと自転車ルートが表示されなかったから、歩行者設定で行ったんだけどね。歩道橋がルートに入って、自転車を担いで上がったり下がったりしたりで、大変だったよ。地図アプリはなければないで、人に聴けば何とかなるのが分かったから、まあいいや」とのこと。
翌日、登校したら大五郎はちょっとした英雄になっていたという。
気をよくした大五郎は、「今度は、今国語の教科書で読んでる『走れメロス』チャレンジをしたい」という。
……なんじゃそりゃ。
「メロスは10里つまり約40㎞走ったって書かれてるけど、日の出から日没間際でかかったとして、時速4㎞くらいだから、実際はほぼ早足くらいだと思うんだよね。だから朝早く出て、メロスより早く40㎞先の目標地に着けるか試してみたいんだ。負ける気がしねえ」
人間、ほんの少し思いついてもなかなかやらないことを、中二はやるのか。
おそるべし、中二病……。
<続く>
コンビニ通信vol.60(2022年1月発行)掲載
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