エッセイ

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 50

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編  50のイメージ

2022年7月15日

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 50
―大五郎、テスト対策の道は遠い―

水無田気流

 

わが一子大五郎(仮名)、現在14歳8か月。

本連載もついに50回目を迎えた。楽しみに読んで下さっている読者の皆様には、本当にありがとうございます。
第1回目のときには1歳だった息子が、今や中学3年生とは感慨深いのだが、乳幼児のころから変わらず、ヤツは好きなことしかしない。
先日は中間試験前に、勉強をしていたはずの大五郎がケラケラ笑っている。またサボって遊んでいるのかと思ったら、読んでいるのは学校でもらった『平家物語』のプリント。

「他化自在天の天魔波旬ヤバい、魔軍を率いる魔王なのにやってることは修行者を悩ませることって単なる嫌がらせかよ、キャラ設定の割にショボすぎてウケる……」とのこと。まあ、修行者って勇者みたいなもんだから天魔波旬は強力な「魅了」とか「混乱」とかをしかけてくるタイプのラスボスと考えたら結構侮れないんじゃ?と言ったら、「たしかに、精神攻撃系ラスボスだとすると厄介だね。でも『平家物語』本編は人間のやってる殺し合いとかの方がヤバすぎて、天魔波旬がショボく見える」まあ、たしかに。あと、先生からもらったプリントだと俊寛が鬼界ヶ島に流される過程が抜けてるから、まあ分かるからいいけど、いきなり行ったみたいになってるんで」……俊寛移動とか言いたかった?「先に言うな(笑)」。

くどいようだが、試験前である。平家物語をエンタメ消費している場合ではない。ある種歴史的なエンタメ作品だが、今は中間テストで点数を取る読み方をしてくれ……と思ったが、ヤツはまったく気にする様子がない。試験が終わって数日後、ふと見ると大五郎が中学生向けの塾の夏期講習のチラシを床に広げていた。さすがに勉強に力を入れる気になったのか!?と思ったが、数分後そのチラシの上にはプラモデルが置かれていた。塗料をぬるため、下に敷いただけらしい。……うん(涙)。

<続く>

コンビニ通信vol.62(2022年7月発行)掲載

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