エッセイ

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 55

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編  55のイメージ

2023年11月21日

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 55

―大五郎、初めての京都一人行脚―

水無田気流

 

わが一子大五郎(仮名)、現在16歳0か月。おかげさまで、先日16歳になった。高校の夏休みの終わり時期に、私と夫が京都の同志社大学開催の学会報告があり、同行した。思えば、これまでいろんな場所の学会やシンポジウムにヤツを連れて行った。小さいころは、出張の際は夫と交代でヤツの面倒を見ていた。幼稚園のころ大阪の学会に同行した時は、たった3日間で大五郎がすっかり大阪弁になってしまったのには驚いた。札幌の学会ではジンギスカンが大好きになり、宮崎のシンポジウムではチキン南蛮が大好きになった。うん、食い気ばかり……。でもコロナ禍でしばらく学会はオンライン開催になっていたので、奴の中学の三年間は学会の出張に同行することもなかった。久しぶりの同行である。

小学生のころと違うのは、もはやヤツは単独行動ができるようになったことである。歴史オタクの大五郎は、親が仕事の間喜んで京都を1人歩きしたがった。交通費と食費を与えて「好きなように観光して来なさい」と言って、夫と学会に行き、有意義な時間を過ごしてホテルに帰って来たら、大五郎がぐったりして寝ていた。「足がやばい。俺は体力が低下した気がする」とのこと。どこを見て回ったの?と聞くと、「八坂神社に参った後、法観寺の五重塔を見て高台寺で写経をして、清水寺に行って、その後宇治に移動して平等院鳳凰堂を見た後、宇治川河川に行って木曾義仲を思いながら宇治川先陣の碑を拝んで、宇治神社に参った後また移動して、一条戻橋を見た後御所に行ってから宿に戻って来た。もう歩けない…」。まあそれは、歩けないと思う。スマホの万歩計を見たら、3万歩を超えていたのには驚いた。だが翌日になったら、大五郎はケロッとして意気揚々と広隆寺・仁和寺方面に出かけて行った。歴オタ、恐るべし。下手なジム通いより鍛えられるかもしれない……。

<続く>

コンビニ通信vol.67(2023年10月発行)掲載

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