エッセイ

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 56

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編  56のイメージ

2024年3月2日

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 56

―大五郎、炎の小判鮫シュート―

水無田気流

 

わが一子大五郎(仮名)、現在16歳3か月。思うに、小さいころからスポーツにはあまり向かないようだった。幼児園児のときに近所のサッカースクールに通ってみたが、いつまでもニコニコしながらドリブルしてばかりで一向にシュートしようとはせず、結局やめてしまった。同時期、空手も習い始めた。幼児園で仲良しのお友達に誘われたことのがきっかけだったが、ヤツは左右がときどきこんがらがるため先生に注意されてばかりでやがて足が遠のき、やめてしまった。

一番長く続いたのは水泳だった。小学2年生のころから始めて中学1年生まで続け、四種泳法を覚えて1級にも合格したのだが、コロナでスイミングスクールが休みになりなんのかんのでやめてしまった。本人が希望して始めたのはバッティングスクールだった。中学生でバッティングセンター通いにハマったのだが、この趣味は結構お金がかかる。どうせならとバッティングセンターで開講しているバッティングスクールに通わせてみた。機械の利用代も込みでフォームなども見てくれるというのでお得感があったのだが、結果、大五郎は野球が嫌いになった。体育会系の熱血な先生であったのだが、困ったことに大五郎は体育会系の指導者が苦手なのだ。

そんな大五郎は今春の体力測定で「始めて100メートル走が『平均』になった!」と喜んでいた。「素晴らしい!」と私は褒めた。「『人並み』になれたねえ」と言ったら「褒められている気がしない」とぶつぶつ言っていた。さらに、先日は「体育の授業のハンドボールでハットトリックを決めた!」とのこと。「それは本当にすごい!」と褒めたら、ヤツ曰く「ゴール前で運動神経がいいヤツの横に張りついて、みんなそいつをマークして俺のことはまったく警戒していないのをいいことに、こぼれ球を拾ってはゴールを繰り返した!名付けて、コバンザメ作戦だ!」……うん。まあ、己を知るのはいいことだね……。

<続く>

コンビニ通信vol.68(2024年1月発行)掲載

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