エッセイ

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 24

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編  24のイメージ

2022年5月27日

無宿渡世母がゆく 子育てコンビニ編 24
―大五郎、ハイテクおいたに母号泣す―

水無田気流

 

わが一子大五郎(仮名)、現在7歳5か月。
初めて買った本は、マイケル・サンデル『これから「正義」の話をしよう』であった。当時、大五郎は3歳。もちろん、ハーバード大学のサンデル教授がどんな人かなどは知らない。iPadをいじっていて、Amazonのほしい物リストに入っていたその本を、誤ってクリックしてしまったのである。しかたなく、読んだ。ためになった。
しかし、まだこれが本だからいい。知人の評論家の方は、「僕は、子どもにAmazonで3Dプリンタを2台買われましたよ」と遠い目をしておっしゃっていた。
クリック1つで買い物できる便利な社会には、恐ろしい罠が潜んでいるようである。

考えたら、大五郎はApple製品のおかげで、まだ鉛筆もまともに握れないようなころから教育アプリで文字なぞり遊びなどをしていた。まあ、勉強になるからいいか……などと考えていたら、恐ろしい目に遭った。
私は現在、「ドラクエ」シリーズの無料ゲームでモンスター育成にはまっている。モンスターはSSからFランクまでいて、くじびきで手に入り上級ほど強いが稀少種となる。当てるのも大変だが、育てるのも大変。もっと労力を注ぎ込むべき物が大量にあるのは分かっているのだが、分かっちゃいるけどやめられないのがダメ人間である。
そして、心血注いで育てたSランクモンスター3体と、さらにSSランクモンスター1体を……あろうことか、大五郎はいたずらで消してしまった。私のiPhoneのパスワードを、こっそり横から見て覚え、ゲームにアクセスしたのである。

私は号泣した。こんなに泣いたのは、人生で母が亡くなったときの次くらいだろう。さすがに大五郎は後で謝り、「ママがモンスターばっかりかわいがるから、僕よりもかわいいのかと思って……」と弁明。
うん、おまえはかわいいよ。でもね、ママはゲーマーなんだよ……。

それにしても恐るべし、スマホ・ネイティブ世代の小学生。
みなさまも、パスワード管理にはくれぐれもご注意を。

<続く>

 

コンビニ通信vol.34(2015年7月発行)掲載

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