第72回四つ葉プロジェクトファイナルセミナー
■四つ葉プロジェクトの目標達成
楽しい夏休みも1/3ほど過ぎた頃と思いますが、いかがお過ごしでしょうか?
7月中は、まだまだ先が長いなあと思っていても、8月に入るとあっという間に過ぎてしまうのが、夏休みだったなあと懐かしく思い出します。
このところ、毎回「子ども子育て支援新制度」についての話題になっていますが、この制度は、1997年に介護保険法が出来たのと同じくらい大きなものだと認識しても良いと思います。
この制度ができるまで、本当に多くの方が尽力されました。
昨年12月に若くしてお亡くなりになった、杉山千佳さんもそのお一人でした。
四つ葉プロジェクトは、杉山さんが、2005年に「社会全体で子どもの育ちを支え、子育て家庭を応援していこう、みんなで子育てする社会をめざそう」を合言葉に、制度やしくみから今の世の中を考えていこうと立ち上げられた活動です。
この活動については、このエッセイ第36回をご参照ください。
昨年の夏の税・社会保障一体改革によって、新しい保育制度や、子育て支援策を盛り込んだ「子ども・子育て支援新制度」が平成27年度よりスタートすることが決まりました。
「医療」「年金」「介護」に「子育て」が加わり社会保障が「四つ葉」になったことで、このプロジェクトの当初の目標が達成されたということで、7月10日に、四つ葉プロジェクト最後の勉強会が開催されました。
■最後のセミナー
平成27年度から始まる「子ども・子育て支援新制度」によって、長年「待機児童」の解消もできない状態だった子育ての施策が良い方向に進むことが期待できるのですが、財源の問題や、就学前の教育と保育の問題など課題はたくさん残されています。
最後の勉強会は、子育て支援と少子化対策をどのように進めるべきかということについて、政府の「社会保障制度改革国民議会」で委員をされている方四人を招いてお話をうかがうというものでした。
パネリストは、大日向雅美恵泉女学園教授、駒村康平慶應義塾大学教授、山崎泰彦神奈川県立保健福祉大学名誉教授の三名。そして進行役は、読売新聞社記者で四つ葉運営委員の榊原智子さんという顔ぶれでした。
大日向先生からは、「次世代育成支援対策の意義と一層の推進を」と題して、次世代育成支援対策について、その意義、これまでの取り組み、厳しい現状のお話と、子ども・子育て支援新制度に基づいて、どのような支援が期待できるか、
そして、ワークライフバランスについてお話しされました。また、すべての子どもと子育て世代を全世代で支援する地域の人材養成が必要なこと、「互助」の社会づくりについても触れられました。
駒村康平先生からは、「子ども子育て支援は、社会の可能性を広げる政策」と題して、子ども・子育て支援政策の4つの目標と適切な政策の組み合わせについて、経済学の視点からお話しされました。
4つの目標とは、@すべての子どもへの良好な育成環境の保証と就学前の教育の充実A出生率の回復:保育所整備とワークライフバランスB女性の就業率の引き上げ:保育所整備とワークライフバランスC子どもの貧困の解消:児童手当 です。
山崎康彦先生からは、「子ども・子育て支援〜成果と課題〜」と題して、子どもを普通に産み育てることができない今の日本について、時代背景と現状、育児の社会化ということについて、育児保険(子ども基金)のことなど、高齢者介護についての考え方と比較しながら、これまでのご経験なども交えてお話をされました。
司会の榊原さんからは、「この先の”子育て支援”の目指したい方向」という題で、「子ども・子育て支援新制度」が歴史的な前進であること、過去20年の少子化対策が限界にきていること、この先の対策に求められるポイントについて、、
@産み育てにくい環境要因の除去、高齢者扶養の社会化と同様、家族・企業・地域の扶養力低下を踏まえた「子育てを社会が応援」する合意と連帯システム、「すべての子どもの育ちを社会全体で応援する」ための具体策について海外の例などもあげてお話しされました。
2030年と2060年の人口ピラミッドの将来イメージの図が、資料に掲載されていましたが、このままだと、日本は2060年つまり私の子どもたちが高齢者にになるころ、人口も大幅に減少しますし、後期高齢者人口の割合が、26.9%、0〜14歳の年少人口が、9.1%、さらに生産者年齢人口(15〜64才)が、50.9%になるいう数字を見て、ゾッとしました。
4人の方のお話しの後、会場を交えての意見交換、質疑応答がありました。子どもに関わる様々な活動をされている方々が集まり、多様な視点からのお話を聞くことができとても勉強になりました。
■ニーズ調査が始まります!
27年度にスタートする「子ども・子育て支援新制度」に向かって、この秋に三鷹市でもニーズ調査が行われます。
三鷹市には、次世代育成支援推進協議会があり、この会議が、子ども・子育て支援法に基づく「子ども・子育て会議」に移行していくようです。
子ども・子育て支援新制度では、地域の実情に沿った事業計画の策定と推進が求められていますので、子育て当事者のニーズを踏まえた事業計画の策定が義務づけられています。
(子ども・子育て会議については、このエッセイ第66回をご参照ください。)
そのニーズ調査の準備が、現在進められています。
この秋、実際にサービスを利用する年代のお子さんをお持ちのご家庭に、アンケート調査が行われます。
アンケートを受け取った方は、ぜひご自身の必要とする支援が何であるのか、良く考えながら、必ず回答をしてくださいね。
アンケートの結果が、新しい子育て支援計画に反映されるのですから。
■子ども・子育て支援が新しい時代に入るために
初めてこの勉強会に参加したころの私は、議論されている内容が良く理解できず、法律などの知識が必要だと、福祉系の大学の通信教育に学士入学し、社会福祉を学びました。
その頃よりは、多少理解できるようになりましたが、社会の制度は複雑で分かりにくいです。しかし、私たちの生活に密接にかかわっているので、まずどんな制度があるのかを知ることから始めると良いと思います。
四つ葉プロジェクトファイナルセミナー終了後、懇親会にも参加させていただきました。
勉強会は、年に2回程度だったと思いますが、2005年頃から長年通ううちにお知り合いもたくさんできました。
研究者、保育の現場のかた、行政関係者、報道関係、子育て支援NPOなど、それぞれの立場で、少しでも今の子育ての環境が良くなることを願っている方ばかりです。
そして、そのみなさんの思いが、新しい法律につながったということ、そのプロセスをこの時代の中で、ウォッチしてきたことにある種の感慨を覚えました。
これから、子ども・子育て支援が新しい時代に入っていけるかどうかは、実際に今子育てをしているお父さん、お母さんにかかっていると思います。
どうぞ、現状を上手に自分の周りに伝え、どんな支援があればうまくいくのか、一緒に考えて行きましょう。
子どもを育てている家庭がいつも笑顔で輝くように、そして社会全体が子どもや子育てに関心をもち、みんなで応援するという気運が高まっていくようにと願っています。
みなさまのご意見ご感想をお待ちしています。
子育てをしていて、嬉しかったこと、驚いたこと、困ったこと、つらかったことなど、子育てをして感じた様々なことを、みんなでおしゃべりしてみませんか?
子育てコンビニでは、毎月「子育てコンビニひろば」という集まりを開いています。子育てコンビニのスタッフ以外は毎回新しい方の参加があり、いつも同じメンバーの集まりではありません。
悩み相談に行くほどでもないけれど日ごろ気になっていることなどを、みんなで話してすっきりすることもあるようです。どうぞお気軽にお出かけください。
皆様のご参加やメールでのお便りなどお待ちしています。
nana
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2013年8月号