南仏だより

その7
最終回
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皆様

 早いものであっという間にフランス滞在の2ヶ月半が過ぎ、帰国まで残すところあと3日となりました。そして貴慶もあと2週間程で2歳の誕生日を迎えます。

 今回の滞在は初めてアパートを借りてのひとり+もうひとりの親子ふたり暮らし。また英語圏ではない、はじめてのフランス語圏の国での生活。とにかく”はじめて”のことが多く、新鮮でもあり、ビツクリもあり。立ち止まったり、振り返ったり、ゆっくりゆったりと流れる南仏時間の中で、暖かいものを感じながら充実した流れを味わうことができました。

■コートダジュール
 コートダジュール、紺碧海岸。誰がつけたのでしょか、本当に美しい響きの名前です。
 アパートのダイニングからコートダジュールでも屈指の透明度を誇るといわれるヴィルフランシュの海が見えます。ここに来て以来すっかり海の景色に恋しています。この海から離れては生きていけないからここに住み着いた、といったのはこのアパートの大家さんの元ベルギー海軍のキャプテンです。


 毎日変わる海の色、文字通りの紺碧から濃い青、綺麗で暗い青、波模様にうねり模様。月のひかりに蒼白く光る波。初めて海岸線に沿って歩いた時の透明な深い海の色、光を反射しながら揺れる波。きっと、昔々初めてこの海を見た人も同じように美しさに目を奪われこの地に住み始めたのかな。そしていまもこうして多くの人を惹きつけ、皆をロマンチックな気分にさせてくれるコートダジュール。きらきら海の反射が空気中に散らばって、あたり一面眩いような日。海の青、空も負けずに青くて遠くの海が水平線の際で時々空と混ざって見え自分まで彼方に吸い込まれそうな不思議な感じ。
 今まで日本を含め色々な場所に行く機会がありました。大好きな、山の風景、雲の景色、雪の色、様々な緑色、樹や空気の香りもたくさんありました。でも今まで見たことのある景色のなかで、このコートダジュールほど、このヴィルフランシュほど、吸い込まれてしまいそうな不思議な、そしてなんともいえない幸せな気分にさせてくれる場所はほかにはありません。もし可能ならば、ずっとここに、このヴィルフランシュの、このアパートのこの場所に、こうして座って、ずっとずぅ〜っと海と星空を眺めていたい。 

■南仏時間
 南仏時間とはひとことで言えば、”待つこと、とそれに慣れること”
 バスが来るのを待ち、列車が来るのを待ち、突然始まるストが終わるのを待ち、お店が空くのを待ち。店では店員がくるのをレジで待ち、レジでは店員どうしの世間話が終わるのを待ち。人に会うためには直接会って予約を取り、また別の日に会いに行き。訪問者の午前中に伺います、のひとことで朝から昼過ぎまで家で待ち。
 頭ではじゅうぶん解っていたつもりですが、つい東京時間、日本時間で考え、行動してしまう癖、習慣がある最初の頃は”カチッ””ムッ”としたことも度々。そんなときでもこの南仏の紺碧色の海、空、太陽の光、月のひかり、きらきらと輝く空気に触れた瞬間、不思議とそんな小さなことはどうでも良くなってしまうのですね。
 また明日で良いか、今度にしよう、次回にしよう、こんなときもあるか、また晴れたらにしよう、という風に。
 これが南仏時間?決して沢山の予定は立てず、焦らず。「予定は未定」とはこのことを言うのでしょうか。
 恐ろしきかなコートダジュールの魔力。


■人生とは、、、。人と生きる、とは
 いままでの海外滞在では、その国に生活する人々との交流を通して、自分の価値観を基準においたうえで物事を考える機会が多かったように思います。言うとすれば外に向って考える機会、かな。
 今回の滞在はゆっくりと流れる時間の中で、自分自身、家族、子供との関係、そして友人や、日頃お世話になっている方々、こちらに来てお世話になった方々のことなどを思い出し、そこから多くを感じる機会をもつことができました。言うとすれば内に向って考える機会かな。
 人生について考えました。時間について考えました。一生について考えました。そして人について考えました。
 答えは一度にでなくても、立ち止まって考え、考えることを大切にすることで結果として、これから先「何か」に向かうことができれば「あぁこれが人生なのかな」と感じることができるのでは。人生とはその「過程」、そのもののような気がしました。

人はひとりでは生きていけない。よく聞く、よく言うことばです。自分が今こうしてここに存在していられるのも、自分のまわりには実に多くのひとが存在していてくれるからです。親、子供、パートナー、友人、知人、先生、先輩、後輩。直接的に関わりのあるひとだけではありません。通りですれ違えば微笑みかけて挨拶をしてくれるひと、困っているとどこからともなく手を差し伸べてくれるひと。コミュニケーションが十分にとれなくても一生懸命話し掛けてくれる人。知らずに多くの人と関わり合いながら生きていく。ひとと共に生きていく。これがひととしてのあるべき、そして自然な姿のような気がしました。
 こんな考えを私に導き出してくれた場所、南仏コートダジュール。もう病みつき。 コートダジュール
 日本で皆様にお会いできる日を楽しみに、残りの南仏滞在を過ごしたいと思います。取りつかれた魔力がとけるにはまだしばらくかかりそうです。


まさき

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